相続税の延納

[平成20年5月1日現在法令等]

1 制度の概要

  国税は、金銭で一時に納付することが原則ですが、相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供することにより、年賦で納付することができます。
  なお、この延納期間中は利子税の納付が必要となります。

2 延納の要件

  次に掲げるすべての要件を満たす場合に、延納の許可を受けることができます。

(1)  相続税が10万円を超えること

(2)  金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること

(3)  延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること
  ただし、延納税額が50万円未満で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供しなくても延納の許可を受けることができます。

(4)  延納しようとする相続税の納期限又は納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること

3 担保の種類

  延納の担保として提供できる財産の種類は、次に掲げるものに限られます。
  なお、相続又は遺贈により取得した財産に限らず、相続人の固有の財産や共同相続人又は第三者が所有している財産であっても担保として提供することができます。

(1)  国債及び地方債

(2)  社債、その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの

(3)  土地

(4)  建物、立木、登記された船舶などで保険に附したもの

(5)  鉄道財団、工場財団などの財団

(6)  税務署長が確実と認める保証人の保証

※  税務署長が延納の許可をする場合において、延納申請者の提供する担保が適当でないと認めるときには、その変更を求めることとなります。

4 担保提供関係書類の提出期限

  納期限又は納付すべき日(延納申請期限)までに延納申請書に担保提供関係書類を添付して提出する必要があります。ただし、延納申請期限までに担保提供関係書類を提供することができない場合は、担保提供関係書類提出期限延長届出書を提出することにより、1回につき3ヶ月を限度として、最長6ヶ月まで担保提供関係書類の提出期限を延長することができます。

5 延納の許可などまでの審査期間

  延納申請書が提出された場合には、税務署では、その延納申請に係る要件の調査結果に基づいて、延納申請期限から3ヶ月以内に許可又は却下を行います。
  なお、延納担保などの状況によっては、許可又は却下までの期間を最長で6ヶ月まで延長する場合があります。

6 延納期間及び利子税

(1)  延納期間と利子税の割合

区分 延納期間 延納利子割合 特例割合
相続税 不動産等
の割合が75%
以上の場合
@動産等に係る延納相続税額 10年 5.4% 3.5%
A不動産等に係る延納相続税額(Bを除く。) 20年 3.6% 2.3%
B計画伐採立木の割合が20%以上の場合の計画伐採
に係る延納相続税額
20年 1.2% 0.7%
不動産等
の割合が50%
以上75%
未満の場合
C動産等に係る延納相続税額 10年 5.4% 3.5%
D不動産等に係る延納相続税額(Eを除く。) 15年 3.6% 2.3%
E計画伐採立木の割合が20%以上の場合の計画伐採立木
に係る延納相続税額
20年 1.2% 0.7%
不動産等
の割合が50%
未満の場合
F一般の延納相続税額(G、H及びIを除く) 5年 6.0% 3.9%
G立木の割合が30%を超える場合の立木に係る延納相続税額(Iを除く) 5年 4.8% 3.1%
H特別緑地保全地区等内の土地に係る延納相続税額 5年 4.2% 2.7%
I計画伐採立木の割合が20%以上の場合の計画伐採立木
に係る延納相続税額
5年 1.2% 0.7%

イ  通常の場合
 延納期間は最長5年、利子税の割合は年6%となります。

ロ  相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額のうちに、不動産、不動産の上に存する権利、立木、事業用の減価償却資産及び一定の同族会社株式(以下「不動産等」といいます。)の価額の占める割合(以下「不動産等の割合」といいます。)が50%以上75%未満の場合
  その不動産等の価額に対応する延納全額については、原則として、延納期間が最高15年、利子税の割合が年3.6%となります。
  不動産等以外の価額に対応する延納税額については、延納期間が最高10年、利子税の割合が年5.4%となります。

ハ  不動産等の割合が75%以上の場合
  その不動産等の価額に対応する延納税額については、原則として、延納期間が最高20年、利子税の割合が年3.6%となります。
  不動産等以外の価額に対応する延納税額については、上記ロと同様になります。

(注) 上記イの場合で延納税額が50万円(ただし、上記ロでは150万円、上記ハでは200万円)未満のときの延納期間については、その延納税額を10万円で除して得た数(1未満の端数切り上げ)に相当する年数に制限されます。

(2)  利子税の割合の特例
  平成12年1月1日以後の期間に対応する延納税額にかかる利子税の割合については特例が設けられています。
  それは、各分納期間の開始の日の属する月の2月前の月末の日本銀行が定める基準割引率に年4%を加算した割合(以下「延納特例基準割合」といいます。)が年7.3%に満たない場合、その分納期間においては、現行の利子税の割合にその延納特例基準割合が7.3%に占める割合を乗じて計算した割合(0.1%未満の端数があるときは、その端数は切り捨てます。)を利子税の割合とするものです。計算式で示すと次のとおりです。

  現行の延納利子税の割合×(延納特例基準割合÷7.3%)

  =利子税の特例割合(0.1%未満の端数切捨て)

7 特定物納制度(延納から物納への変更)

  延納の許可を受けた相続税について、その後に延納条件を履行することが困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、分納期限が未到来の税額部分について、延納から物納への変更を行うことができます。
  特定物納申請をした場合には、物納財産を納付するまでの期間に応じ、当初の延納条件による利子税を納付することとなります。
  なお、特定物納に係る財産の収納価額は、特定物納申請の時の価額となります。

※ 上記については、平成18年4月1日以後の相続開始により財産を取得した場合に適用されます。
  なお、平成18年3月31日以前の相続開始により財産を取得した場合には、改正前の相続税法が適用され、上記の担保提供関係書類の提出期限、延納の許可などまでの審査期間や特定物納制度などの適用はありません。

(相法38、39、48の2、52、相令12〜15、通則法50、措法70の10、70の11、93、措令40の10)

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