連結納税制度
規定の趣旨
連結納税制度は、企業集団の一体制に着目し、集団内の個々の法人の損益
などを集約することによって、企業集団をあたかも一つの法人と捉えて課税す
る仕組みである。
この制度を創設することによって企業の組織再編成を促進し、わが国企業の国
際競争力の強化と経済の活性化に資するという考え方からわが国でも導入され
ることになった。
連結納税制度を創設した結果、いずれにしても損益は通算され、内部取引によ
る損益は繰り延べられるから、税負担の水平的公平は確保されたといえる。
つまり、税法は企業の経営形態に対して中立であることになったのである。
| 項目 | ポイント |
| @適用の選択 | 連結納税を適用するか否かは任意だが、適用 する場合は完全支配関係のあるすべての子 法人を対象とする。 |
| A連結所得金額 | 連結事業年度の益金の額から損金の額を控除 した金額だが、計算の順序とルールが定められ ている。 |
| B内部損益の繰延べ | 譲渡損益調整資産については譲渡損益を繰り延 べる必要がある。 |
| C時価評価損益 | 適用・加入時の一定の資産については時価評価 を行う必要があるが、例外規定もある。 |
| D欠損金の繰越し | 連結欠損金は7年間の繰越したが、子法人の連結 前に生じた欠損金は、特定のものを除いて繰越控除 の対象にならない。 |
| E寄付金、交際費等 | 連結法人が完全支配関係のある他の連結法人にた いして支出した寄付金は全額損金不算入となる。 交際費等は親法人の資本規準としてグループ一体 で損金不算入額の計算をする |
連結納税制度の適用法人は、内国法人である親会社と、その親会社に発行済
株式の全部を直接又は間接に保有される100%子会社(完全支配関係)である。
ただ、このような関係にあっても、連結納税制度を適用するか、従来どうりの
単体課税によるかは企業の任意で選択となっている。
申告と納税
連結所得に対する法人税の申告及び納付は親法人が行うが、連結納税制度
の適用を受けた100%子会社は、連結所得に対する法人税について連帯納付
義務を負う。
連結法人税の申告と納付は親法人が行うが、連結納税制度の適用を受けた
100%子法人は、連結所得の個別帰属額等を記載した書類を税務署に提出する。
連結納税額の申告納付は、連結事業年度終了の日の翌日から2か月以内に
行うのが原則である。ただし、連結申告については事務処理が煩雑で、原則ど
うりの期限に申告できないことが考えられる。そこで、連結申告申告について
は、2か月の申告期限延長の特例が設けられている。(原則として2か月間延長)
延長は連結親法人が連結事業年度終了の日の翌日から45日以内に、提出。
連結事業年度
事業年度の中途において、完全支配関係になった他の内国法人・・・・・
完全支配関係を有することとなった日からその事業年度終了の日までの期間。
みなし事業年度
連結納税を適用する連結親法人と連結子法人の事業年度が異なる場合には、
連結子法人は連結親法人の事業年度に統一する必要がありますので、連結子
法人は「みなし事業年度」を設けることになります。
連結子法人は、商法等の規定に基づき自ら事業年度を決定し、定款にその記載
を行っていますので、連結納税を導入したからといって事業年度を強制的に変更
することはできません。このことから事業年度を特別に区切る方法として「みなし
事業年度」を設けている。
例
連結親法人が3月決算で連結子法人が12月決算の場合
つまり、12月の本決算と3月の仮決算を毎期行うことが必要になります。
実務上は、毎期仮決算を行う事務処理の煩雑さを考慮して、決算期を変更する
ケースが多いと思われます。
連結親法人 4/1 3/31
連結納税開始
連結子法人 4/1 12/31 3/31
12/31 3/31
![]()
みなし事業年度 みなし事業年度
連結納税の申告実務
連結子法人
連結納税額の申告・納付につていは、連結親法人が行いますので連結子法人は
連結確定申告書を提出する必要はありませんが、各連結事業年度の申告期限ま
でに以下の書類を連結子法人の所轄税務署長に対して提出しなくてはなりません。
| 連結事業年度の貸借対照表、損益計算書、損益金の処分表、勘定科目内訳明細書 連結法人の個別帰属額の計算によつて算出された税額等に関する書類等(個別帰属 額の届出書) |
連結親法人と連結子法人間における納税額の振替
連結法人税額の納付義務は一次的には連結親法人が負つていますので、連結子法人
は自らが負担すべき税額を連結親法人へ支払うことになります。つまり、各連結子法人
の個別帰属額が確定した段階で、連結親法人に対する未払債務が成立します。
(連結親法人)
| (借)法人税等70 / (貸)未払法人税等100 未払法人税負担額30 / (子法人に対する債権) |
(連結子法人)
| (借)法人税等30 / (貸)未払法人税負担額30 (親法人に対する債務) |
なお、連結親法人と連結子法人との間で個別帰属額の清算をおこなわないと、実質的に
未収債権を計上している法人から未払債務を計上している法人への寄付行為と認定され
ますので、毎期必ず清算するようにしてください。
連結納税における消費税の取扱い
消費税に関しては、連結納税を適用してもみなし事業年度を採用した場合の課税期間
に係る取り扱いを除き、処理方法については全く影響はありません。各連結法人がそれ
ぞれ要納付額を計算して納付することになります。会計処理方法についても、連結法人
として統一する必要はありませんので、連結親法人が税抜方式で連結子法人が税込
方式であっても何ら問題はありません。
なお、法人税、地方税とも課税期間については連結事業年度に合わせることが求められ
ますので、連結納税適用に伴って連結子法人がみなし事業年度を設けた場合には、消費
税においてもみなし事業年度に基いて申告納付する必要がありますので留意してください。
連結納税額の算出方法
(1)各連結法人の所得の合算
連結納税においては、まず、各連結法人の所得を合算することからスタートします。税引後
純利益に各連結法人がそれぞれ税務上の加算減産項目を調整し個別所得を算出すること
は、単体納税での作業と原則として変わることはありません。
ただし、受取配当等の益金不算入、交際費の損金不算入、寄付金の損金不算入、繰越欠
損金の損金算入等に係る調整は、連結法人全体で行う必要がありますので、ここでは行い
ません。
(2)連結所得に係る調整事項
連結所得に係る調整事項は大きく分けて2種類あります。
1つは、各連結法人がそれぞれ行う調整事項で、これは連結法人に対する債権について
貸倒引当金を計上した場合に調整する処理や、連結法人間の取引により生じた一定の
譲渡資産損益を繰り延べる処理などがあります。
もう1つは、連結法人全体で税務上の限度額計算等を行う項目で(1)の個別所得調整から
除外された受取配当等の益金不算入に係る調整などがあります。
(3)連結税額に係る調整事項
(2)の調整を行った結果、連結法人税額の課税標準となる連結所得金額が算出され、この
連結所得金額に税率を乗じて調整前連結法人税額を計算します。「調整前」と記載したの
は、この後、税額控除等の調整を加え最終的な連結法人税額を算出するからです。
連結税額調整にも各連結法人が単独で行うものと連結法人全体で行うものがあります。
前者には、特定の設備等を取得した場合の税額控除が、後者には、所得税額控除、外国
税額控除、試験研究費に係る税額控除、同族会社の留保金課税等があります。
(4)連結税額の各連結法人への配分
連結法人税額を各連結子法人へ按分する作業を行います。この計算を連結法人税の個別
帰属額の配分といい、各連結法人の調整前連結税額に特定の設備等の取得に係る税額
控除を適用した後、連結ベースで計算した税額控除を各連結法人へ按分して算出します。
例えば、連結親法人の調整前連結税額が50、連結子法人A社が8、連結子法人B社が-20
で、税額控除の各連結法人への按分額がそれぞれ、5,2,1とすると、各社への配分される連結
法人税額はそれぞれ
50-5=45
8-2=6
-20-1=-21
となります。
A法人は6を親法人に支払い
B法人は親法人から21を取得し
親法人は45+6−21=30が負担となり連結法人税を精算する。
(5)連結法人税率について
連結法人税率は連結親法人の区分に応じて以下の税率が定められている。
| 連結親法人の区分 | 資本等の額 | 連結所得 | 税率 |
| 普通法人 | 1億円超 | - | 30% |
| 普通法人 | 1億円以下 | 年800万円まで | 22% |
| 普通法人 | 1億円以下 | 上記以外の部分 | 30% |
連結中間申告の取扱い
(1)原則的な取扱い
単体納税と同様に連結納税においても、連結事業年度が6ケ月を超える場合には、連結事業
年度開始後6ケ月を経過した日んら2ケ月以内に、連結親法人は連結中間申告書を作成し、前
事業年度における連結法人税額の2分の1を納付する必要があります。ただし、要納付額が10
万円以下である場合には、中間申告する必要がありません。また、前年実績の2分の1納付に
代えて、連結事業年度開始の日から6ケ月間を1つの連結事業年度とみなした仮決算を行って
連結中間申告書を提出することが可能です。
連結中間申告書による納付はあくまで仮納付に過ぎないため、連結子法人との間で税額に係る
精算を行う必要はありません。また、連結子法人が中間連結申告に係る個別帰属額等の届出
書を提出する義務もありません。
(2)連結納税に移行した場合の取扱い
連結納税に移行した初年度には、前連結事業年度の納付実績がありませんので、連結親法人
及び連結子法人単体の直前事業年度における法人税額の6カ月相当額を合算して納付すること
になります。
連結納税制度における地方税の取扱い
(1)連結法人における地方税の納税義務者
連結納税を適用した連結法人の都道府県民税、市町村民税、事業税などの地方税については、
各連結法人が納税義務者として各々申告することになります。法人税に関しては、連結親法人と
連結子法人が連名で確定申告を提出しますが、地方税については単体納税と同様、各連結法人
が単独で申告を行います。
(2)連結納税制度における地方税の課税標準
連結納税においては、住民税における法人税額に対し、「個別帰属法人税額」、事業税における
所得金額に対し「連結所得個別帰属額」が課税標準となります。個別帰属法人税額とは、個別
所得金額に法人税率を乗じ、所得税額控除等の連結法人帰属額を調整したものです。また、連結
所得個別帰属は個別帰属益金額から個別帰属損金額を控除したものです。
法人税では、連結納税適用に伴い打ち切りとなった連結子法人の繰越欠損金は連結所得金額か
ら控除することはできませんが、地方税においては個別帰属損金額として各連結法人の所得から
控除できる点に注意が必要です。
(3)事業年度の取扱い
連結納税を適用した場合における地方税の事業年度は、連結事業年度と同一になりますので、
みなし事業年度を採用している法人は、連結法人税申告書の提出期限までに地方税の申告書を
提出しなくてはなりません。
連結法人税に係る確定申告の提出期限延長を申請している法人は、住民税については自動的に
申告期限が延長されますが、法人税に係る申告期限の延長処分があった日から7日以内に、各連
結法人が所在する都道府県の知事宛に「法人税に係る確定申告書の延長の処分等の届出書」を
提出しなくてはなりません。
事業税については、連結法人税と同様に連結事業年度終了の日から45日以内に「申告書の提出
期限の延長の承認申請書」を各連結法人の所在する都道府県の知事宛に提出し、証人を受ける必
要があります。なお、中間申告については、事業年度開始から6カ月間を1つの事業年度とみなした
仮決算による予定納税は認められませんので、前年実績の2分の1を納付することになります。
連結法人が行う住民税の申告実務
(1)法人税割と均等割
住民税には、法人税額を課税標準とする法人税割と、期末資本金額・従業員数等を課税標準とする
均等割があります。均等割については、連結納税を適用しても原則として単体納税と変わることはあ
リませんが、期末資本金額については単体納税で使用する資本積立金額に代えて各連結法人の連
結個別資本積立金額を使用します。結果として、連結子法人の場合、連結法人税の個別帰属法人
税額を基に、連結納税適用に伴い打ち切りになった繰越欠損金控除額等の調整を行って課税標準を
算出する。
連結所得調整が必要となるその他処理
(1)受取配当等の益金不算入
連結グループは親会社と100%子会社から構成されるから、子会社から親会社への配当がおこなわれる。
このような連結子会社からの配当金は、同じ連結グルーブの課税済しょとくから支払われるので完全な
二重課税が生じる。そこで、これらのあけ取配当は負債利子を控除しないで益金不算入とする。
| 株式等の種類 | 益金不算入割合 |
| ア連結法人株式等 | 100% |
| イ関係法人株式等 | 100% |
| その他の株式等 | 50% |
アは計算期間の開始から末日までけいぞくして連結完全支配関係があったもの。
イ発行株式等の25%以上を、その配当等の支払義務確定日以前6ケ月以上引き続き所有する場合。
各連結法人への帰属する額の按分割合
連結納税においては、連結親法人が受取配当等の益金不算入額を計算し、連結法人全体として計算
された金額を各連結法人へ按分する必要があります。このため、連結親法人は連結所得を計算する際、
連結法人全体で算出した受取配当等に係る益金不算入額を各連結法人が収受した配当等の額に応じ
て按分します。
具体的な計算方法は以下のとうりです。
| 配当等を受け取る区分 | 各連結法人への帰属額の算出方法 |
| 連結法人株式等 | 当該連結法人が収受する配当等の全額 |
| 関係法人株式等 | 関係法人株式等に係る益金不算入額 ×当該連結法人が収受する関係法人株式に係る配当等の額 /連結法人全体が収受する関係法人株式に係る配当等の額 |
| その他の株式 | その他の株式等に係る益金不算入額 ×当該連結法人が収受するその他株式に係る配当等の額 /連結法人全体が収受するその他株式に係る配当等の額 |
(2)寄付金・交際費等
寄付金の損金不算入額はグループ全体で計算し、損金算入限度額は、次の算式で計算する。
(連結所得金額×2.5/100+親会社の資本等の金額×2.5/1,000)×1/2=損金算入限度額
連結法人が完全支配関係がある他の連結法人に対して支出した寄付金については、その全額
が損金不算入となる。
各連結法人へ帰属する額の按分計算
寄付金に係る損金不算入額の各連結法人に帰属する額は、連結法人に対する寄付金については
その支出額であり、連結法人グループ外の内国法人に対して支出した寄付金については、以下の
計算式によって算出した額とします。
各連結法人への個別帰属額は連結法人への寄付金支出額+計算式による按分額
各連結法人の損金不算入額の帰属額=A× E−F−G×H/D
B−C−G
A:連結法人全体の損金不算入額(連結法人に対するものは除く)
B:連結法人全体のグループ外法人等に対する寄付金支出総額
C:連結法人全体の国等に対する寄付金支出額及び指定寄付金の額
D:連結法人全体の特定公益増進法人に対する寄付金支出額
E:各連結法人のグループ外法人等に対する寄付金支出総額
F:各連結法人の国等に対する寄付金支出額及び指定寄付金の額
G:損金の額に算入される連結法人全体の特定公益増進法人に対する寄付金支出額
H:各連結法人の特定公益増進法人に対する寄付金支出額
交際費等の損金不算入額は、連結親法人の資本金額に応じ、連結法人を一体として計算する。
連結親法人の資本金等が1億円超・・・・・・全額損金不算入
連結親法人の資本金等が1億円以下・・・・・支出交際費等の額
400万円×(当期の月数/12) いずれか少ない金額の90%
各連結法人へ帰属する額の按分計算
各連結法人への帰属額=連結法人全体の交際費に× 各連結法人の交際費の額
係る損金不算入額 連結法人全体の交際費
連結親法人が1億円を超える場合には、各連結法人がそれぞれ計上した交際費等額
(3)貸倒引当金
貸倒引当金は連結グループ内の各法人の個別計算となるが、連結グループ内の法人間の金銭債権
は貸倒引当金の繰入限度額計算の対象となる金銭債権から除外し、一括評価金銭債権に係る貸倒
実積率の計算からも除外する。
所得税額控除
各連結法人の所得税額控除=当期銘柄の各連結法人の所得税の額
×当該銘柄の連結法人グループ全体の所得税額控除
当該銘柄の連結法人の所得税額合計
同族会社の留保金課税
連結留保税額の個別帰属額=連結留保税額× 各連結法人の連結個別留保税額
各連結法人の連結個別留保税額の合計額
各連結法人の連結個別留保税額は、連結法人が個々に留保税額を計算するもので、連結親法人と
同じ計算を行います。
戻る